最近では、ZEH(ゼッチと読む)住宅(ゼロエネルギー住宅のこと)が少しづつ多くなってきています。
このZEH住宅には、必ず太陽光発電を搭載する必要があります。
(ゼロエネルギー住宅については、こちら)
しかもゼロエネルギー住宅とするために相当量の容量を持った太陽光パネルを搭載することになります。
太陽光発電は昼間にしか電気を作れない関係上、容量の大きい太陽光発電の場合、発電した電気を家の中で使い切ることが出来ず、
そのまま余ってしまうことがあります。これを余剰電力と言います。
これらの余剰電力は、どうすることが良いのでしょうか?
これから家づくりを考えていたり、これから太陽光発電を載せようと考えている方は、事前にこのことを検討しておくことでメリットを受けられる可能性があります。
新築当初、10年間はこの余剰電気を買い取ってもらうと言うフィードインタリフ(略してFIT)制度があるので、売る選択肢を選ばれる方が殆どです。
ここ最近の最初の10年間の固定買取価格は下の表です。
これでいくと、電気料金の契約形態にもよりますが殆どの場合、余った電気は自宅で使うより、売ってしまう方が得です。
しかし、これが10年経つとそうはいかなくなってくるのです。
10kW未満 出力制御対応機器設置義務なし 出力制御対応機器設置義務あり※1 2018年度(参考) 26円 25円
(ダブル発電)28円 27円
(ダブル発電)2019年度 24円 26円 2020年度 - 2021年度 - 調達期間 10年間 ※1:北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の供給区域において、出力制御対応機器の設置が義務付けられています。
出典:「資源エネルギー庁 固定価格買取制度」
太陽光発電の固定買取後はどのようになるのでしょうか
卒FITとは、簡単に言うと太陽光を設置して11年目以降のことを言います。
当初10年は結構な値段で電気を買い取って貰うことが出来ますが、11年目以降は今まで何も決まっていませんでした。
しかし、2019年の11月から、FIT制度が始まって10年が経過する契約がいよいよ出てくるタイミングになりました。
そしてこのタイミングで11年目以降の電気を売る値段が各電力会社より発表されてきたのです。
それによると、従来の大手電力会社では、会社毎に少し違いがありますが、1kWhあたり7円~9円となっています。
(例えば、関西電力なら1kwhあたり8円です。)
つまり、値段が大幅に下がるのです。
この8円は、大手電力会社が海外から電気を作り出すために買ってくる、石油やガスの取引値段を考慮に入れた値段だそうです。
正当性はありそうな値段ですが、こんなに安くなったのでは正直売ってしまうのも勿体ないと思っても仕方がないことです。
また、従来の大手電力会社だけでなく、新電力と呼ばれる新しい電力を取引する会社も現在は多くあります。
これらのところに買って貰う場合、少し高めに売れる場合があります。
大体11円~13円と言ったところです。
恐らくこれは夜間電力の電気代を意識した料金と思われます。
これでも今までのことを思うと、そんなに得した気分にはなりませんよね?
そこで、何か他の方法が無いかと考えた時に以下に挙げる方法も考えられるのです。
卒FITでのエコキュート利用のメリットは?
8円やそこらで売ってしまうくらいなら、買ったら23~25円程度する電気の代わりとして自宅で使うことを思いつきます。
自宅で電気を消費することを「自家消費」と言って、立派な省エネ手法の一つなのです。
そして、その代表的な自家消費の方法として挙げられるのが、エコキュートの利用です。
エコキュートは、簡単に言うとお湯を沸かす給湯器ですが、特徴としては、
・電気でお湯をわかせる
・沸かしたお湯をタンクに貯めて保存できる
と言う、大きな特徴があります。
また、エコキュートは従来、大手電力会社が提供する夜間の安い電力を利用してお湯を沸かすシステムでした。
夜間の電力についても、電力会社によって相違がありますが、14円~15円程度のところが多いことを思うと、
昼間の余った電力でお湯を沸かして貯めておけるなら、貯めておいた方が得な場合があります。
(お湯は徐々に冷めるので、本来はその分も考慮すべきなのですが、ここでは無視します。)
最近のエコキュートは、非常に賢いタイプのものがあり、翌日の天気予報を見て、今晩貯めた方が良いのか、翌日の太陽光の余った電気で貯めた方が良いのかを判断するものがあります。
また、1日で消費するお湯の量も使っていく内に把握していくので、無駄に多く炊きあがることを極力減らすことも可能です。
ですので、安い電気代で売ることを考えると、お湯を沸かすための電気としてエコキュートを導入して利用する方法があります。
ただし、昼間に電気を賢く沸かせるタイプが良いです。
実際には、エコキュートの場合は導入コストが掛かりますので、念の為この比較を載せておくと。
(※注意:この比較はエコキュートの耐用年数を10年としたため、エコキュートを買い替えた前提で、最初の10年の売電は含んでいません。)
エコキュートVS11年目以降の売電 | ||||
---|---|---|---|---|
大手電力会社 | 新電力 | |||
エコキュートで得する電気代(年間) |
20,000円 | 20,000円 | ||
売った場合の儲け(年間) | 10,700円 | 18,700円 | ||
差額 | 9,300円 | 1,300円 | ||
エコキュートの買替を10年とすると | 93,000円 | 13,000円 |
【試算条件】
エコキュートの年間の電気代は、Panasonicホームページを参考『http://sumai.panasonic.jp/hp/2point/2_3.html』
夜間電力を15円/kwhと想定し年間の必要電力を1333kwhとした。
売った場合の儲けは、大手電力会社に8円/kwhで売った場合を想定。
新電力の場合は、14円/kwhで売った場合との比較
簡単な試算ですが、エコキュートの導入コストが従来品よりかなり高くなる場合はそれほどお得になるとは言えないようです。
ただ、エコキュートが従来品と同等程度であれば自家消費の方が若干得すると言ったところでしょうか。
先程はエコキュートの特性上、夜間電力との比較がもっぱらでした。
しかし、蓄電池の場合ですと夜間の利用だけでなく、雨や曇りの日の昼間の電力との比較が可能となります。
雨や曇の日であれば、太陽光での発電はさっぱりですから、蓄電池に貯めた電力を利用することが最良と言えそうです。
また、蓄電池はお湯だけに使うのではなくて、家電製品であれば何でも使えます。
そこで、蓄電池に貯めた場合と全部売った場合の比較をしてみたいと思います。
太陽光を取り付けた当初10年は、蓄電池に貯めるより売る方がお得なので、11年目以降に蓄電池を取り付けた想定とします。
総務省の統計局によると2018年の4人暮らしの年間の電気代の平均は、140,000円程度で5,500kwh程度
(本来、省エネ住宅ならもっと少ないはず)
この内、昼間(午前7時~午後11時)と夜間の電気使用量の比率は10:4とします。
(※電気事業連合会による一日の電気発電量の推移を時間帯別に積分した割合)
家庭用の蓄電池は10,000回程度の充放電が可能なものが一般的で、15年程度の保証がついてくるものもあります。
1日1回の充放電として、27年もちますが、少し少なめに見て20年もつと考えましょう。
場所によって大きく異なりますが、晴れの日は大体年間で6割程度として、残りの4割を曇りか雨の日として昼間に貯めた電気を使うとします。
晴れの日は太陽光発電があるので蓄電池の威力はあまり発揮できず、夜間に貯めた電力を使うことにします。
ならすと1日に4kwh程度です。
雨や曇りの日は蓄電池の最大容量まで利用できることにします。(ここでは最大を7kwh設置とします)
(蓄電池には晴れの日の間隔が上手く振り分けられて、常に満タンまで使えることを想定します。)
これで売った場合との比較を考えると。
買わずに済む電気代は、年間38,620円、20年間で772,400円
余った電気を売った場合の儲けは、8円だと年間15,161円で20年で303,232円。
14円だと、年間26,533円、20年間で530,656円
なので、20年間の差額を見ると
8円で売った場合の比較は47万円程度
14円で売った場合の比較は24万円程度
となります。
今、7kwhの能力の蓄電池を考えたのですが、補助金などを利用したとしても正直元を取るのは難しいかもしれませんね。。。
これはあくまで概算ですので、これから家を建てるひとは、家の断熱性能や家電製品の省エネ性能などによって、
必要な蓄電池の量が代わります。
これによって、意外と導入コストとの差が縮まることも考えられるので、一度正確に試算して貰うと良いでしょう。
実際には、太陽光発電と蓄電池があれば電力を購入することが無くなり、かなり得するのではないかと言った試算や実例もあります。
太陽光発電と蓄電池で全く電気を購入することが無くなれば、単純に年間14万円はかからなくなる想定です。
これであれば、20年間で280万円も得する事になります。更に当初10年の売電を考えると、更に得になりそうですね。
(参考:「近未来!VPP(バーチャルパワープラント)とは何でしょう?」)
卒FITでの電気自動車利用も考えられる
電気自動車やPHV(プラグインハイブリッド)の場合、一般的には蓄電池を購入設置するよりも導入コストは安いとされています。
更に走ると言う機能もついているので、貯めることだけを考えると電気自動車に軍配があがります。
しかし、V2H(ビークトゥーホーム)と言う、車に貯めた電気を家で使う。
と言ったことに対応している車とそうで無い車もあります。
さらに、V2Hを実践するためには専用の機器も必要となり、そのコストも掛かります。
なので、貯めた電気をいつでも使えるようにするためにはさらなるコストが必要なのです。
電気自動車は自動車メーカー側が普及の計画を立てているようですので、今後コストもガソリン車並に下がるでしょう。
※2050年には、日本国内においてもガソリン車は廃止され、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)のみになることになっています。
それを見据えて、駐車場に充電用のプラグを設けておくと言ったことはこれから新築を考えるのであれば、あっても良いと思います。
電気自動車の場合は、ガソリン車と比べられることが多いのですが、家庭用の電気を利用して充電しても、
ガソリンと比べると6分の1程度のコストとなるようです。
ご家庭の車をどんな頻度で使用するのかにもよりますが、結構車を利用する家庭ならガソリン車と比べると余った電気を貯めることで電気自動車とガソリン車の差額を埋めることが出来るかもしれません。
余剰電力を電力会社に預かって貰うと言う選択肢もあります。
この場合、電力会社によってかなり扱いがことなります。
月額料金が必要な場合や、実質売っているのと変わらない値段設定になっていたりします。
預かって貰うより売るほうが得する場合などもあるようです。
概ね、かなりお得と言ったプランは今の所見当たりません。
ご自身が住んでいる電力会社の対応をよく吟味しましょう。
将来の可能性について、少し触れておくとドイツなどでは既に実現しているのですが、
上記のような様々な手法を組み合わせて、太陽光発電を設置した住民本人が、電力の売り主となって一番特に売るあるいは使うというのを決めて自由に売買出来る世界がやってくるかもしれません。
このような世界が日本でも実現すれば、選択肢は更に広まるものと考えられます。