2019年6月

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リフォームにおける新しい省エネ技術 技術報告集【論文】

2017年に近畿大学の一員として、エネマネハウスと言う新たな住宅の省エネルギー技術を取り入れた建物を設計、建築するコンペに参加致しました。

その際の様子は以下にて確認できます。
エネマネハウス2017のモデルハウスが一般公開されます!【2週間限定】
エネマネハウス2017の結果発表!
2018年グッドデザイン賞受賞! エネマネRハウス

そして今回、2年の月日を経て我々が取り組んだ内容がようやく公開されました。
建築学会と言う我々建築業界では、最も権威のある学会における「技術報告集」と言う査読付き論文(A論文:つまり他の専門家によって正式な論文として認められた論文)として、掲載されています。
エネマネハウス 2017 における『エネマネR(アール)ハウス』の省エネ・環境技術

これは我々が取り組んだ新しい考え方の一部の発表なのですが、こちらではその内容についてもう少し平易に纏めて紹介したいと思います。

エネマネハウスでは何を競うのか?

エネマネハウスでは、いろいろな省エネ技術を取り入れて、将来普及可能な省エネ生活を提案するという事がコンセプトとなっています。
1次審査では、書類審査が行われ決勝では実際に提案した住宅が建築されます。
建築された住宅で、実際に2週間ほど生活してみて、どの程度省エネだったのかを競います。

エネマネRハウス
昭和50年代の一般住宅をリフォームしたエネマネRハウスの外観

エネマネRハウスの考え方

我々、近畿大学チームが提案したのが「エネマネRハウス」
RはリフォームのRやリユースのRと言う複合的な意味合いが含まれています。

昭和50年代に沢山のニュータウンが開発されました。
その際に建築された住宅は、殆ど同じような間取りで、大量のストックとして残っています。

この時に家を建てた世代は、既に子供が自立し、親元を離れています。
ですので部屋数に余りが出てきて、使わない部屋が多く存在しています。

今後、人口減によりさらに空き家も増え、ますますニュータウンにおける地域のコミュニティが希薄になることが予想されます。
このコミュニティの希薄化に待ったをかけるべく、提案されたのが今回のエネマネRハウスの基本的な考え方です。

エネマネRハウスBefore
改修前の間取り

こちらが昭和50年代の住宅の代表的な間取りとなります。
ご自宅もこのような間取りだと言う方は多いのではないでしょうか?
真ん中に玄関があり、家の中心に階段があります。
廊下を介してLDKと和室&水回りが配置され、2階が個室。
と、当時一番多かったであろう間取りがこちらになります。

エネマネRハウスAfter
改修後の提案の間取り

そして、その間取りを改修した後(今回の提案)の間取りがこちらです。
高断熱ゾーン(薄く灰色掛かったゾーン)と言うところが実際の生活空間になります。
そして、ルームガーデンが地域コミュニティを活性化させるための"近隣の人が集まれる場所"となります。

このように、新たな生活空間を2人生活用に最適化して、残りの空間をコミュニティスペースとして活用する。
こうすれば、生活に必要なエネルギーは生活スペースの集約によって、冷暖房や照明に関する使用エネルギーを少なくすることが出来ます。

また、コミュニティスペースによって近隣の方が気軽に集まれるスペースを作っておくことで、地域とのつながりも新たに生み出すことが可能です。

このように、スペースに新たな役割を与えるという事が今回の提案のメインとなります。

また、生活動線を集約するために、カートリッジと言う新たな概念を取り入れ、このカートリッジが新たな生活シーンを生み出すと言う提案も同時に行っています。

エネマネRハウスに導入した新たな省エネ技術

難しい話は、論文の内容を見て頂くとして、簡単にどういったことが出来るようになったのかを記します。

家庭でのエネルギー消費割合
一般的な家庭でのエネルギーの消費割合

一般的な家庭では、お湯・暖房・照明などに使用するエネルギーの量が大部分を占めます。
ですので、これらを如何に少なくするかが大きなポイントとなります。

最初の写真を見て頂くと分かるとおり、今回の建物ではかなり沢山の窓を有しています。
究極に高断熱化を行うことで、窓の割合を増やしても十分に暖かな空間が生み出されるわけです。
窓が多いことよって、昼間の明るさ(昼光率)も明るくなり、とても開放的な空間とすることが可能となります。
このことにより、照明に使用するエネルギー量を削減出来るのです。

また、高断熱化と生活動線の集約化によって、暖房もかなり小さい暖房性能のものでよくなります。
今回は、既存のエアコンを改造することにより、殆どエネルギーを使わないエアコンを用意しました。

屋根には太陽光発電システムの他に、太陽熱温水器のパネルも設置。
エネファームを利用して、出来たぬるいお湯は、余ったら捨てられるのですが、そのお湯を捨てずに太陽熱温水パネルで熱いお湯にまで熱します。
そうして、お風呂のお湯に利用するというシステムを新たに提案。お湯に使うエネルギーの量をかなり減らすことに成功しました。

大きな部分として、3つの手法をご紹介しましたが、更に他にも沢山の工夫がなされています。
このような工夫を沢山行うことでかなり使用するエネルギーの量を減らすことに成功しました。

このような考え方や技術が少しでも世の中の生活の質をあげ、省エネに貢献することが出来れば、そんなに嬉しいことはありません。
ぜひ、ご参考にして下さい!!

 

太陽光発電は将来的には火力発電より安くなる!?

アメリカの技術者であり、サイエンスライターのRamez Naamさんが提唱し、Googleなどもこの思想を取り入れているそうなのですが、太陽光発電で発電できる電気の価格はある法則に従って安くなっていくそうです。
今回は、この考え方についてご紹介致します。
太陽光発電の採用を迷っている方は是非ともご参考にして下さい。

太陽光発電の値段はムーアの法則に従っている?

ムーアの法則というものをご存知でしょうか?
ムーアの法則とはアメリカのインテルと言う、「インテル入ってる?」と言うCMでお馴染み(古い?)のパソコンのプロセッサを作る会社の創業者である、ゴードン・ムーアさんが1965年に論文を発表して有名になった法則です。

集積回路上のトランジスタの数は、「18ヶ月(1年半)毎に2倍になる」

というもので、事実これはその通りに発展しパソコンの能力は目覚ましく向上しました。
(近年ではその伸びも鈍化しつつありますが、GPUへの移行で維持されるとも言われています。)

ムーアの法則の面白いところは、性能の向上と言う視点だけでなく、裏を返せばそれだけ性能の良いものが安く手に入るようになる。つまり、コストも同じような法則で安くなる。
と、言うことも言えるところです。

この考え方を太陽光発電の値段に適用してみたRamez Naamさんは、2010年に2009年までの実際のデータを使って、以下のようなグラフを作成しました。

太陽光発電におけるムーアの法則
太陽光発電のおけるムーアの法則

このグラフは、2009年までのデータが実際のアメリカでの市場のデータです。
そして、それ以降が予想の値となっています。値段は太陽光発電の1W当たりの値段をドルであらわしています。

ちょっと、日本人の感覚では分かりづらいので、1ドル=110円として、1kw当たりの値段にて換算してみます。
すると、次のようなグラフが出来上がります。

太陽光発電におけるムーアの法則
太陽光発電のおけるムーアの法則(日本円に換算)

このように換算してみると、2000年頃に1Kw50万円、2015年には1kw19万円と言う数字が読み取れます。(対数グラフと言う表示になっているので、分かりづらいかもしれませんが。)

実際に、日本において2000年頃の太陽光の値段は58万円程度であり、2015年頃には商業用では約28万円(住宅用で約)44万円でした。

こうしてみると、少し差はありますが概ね法則に従っているようにも見えます。

2020年太陽光発電は石炭発電(火力発電)を下回る!?

実際に、Ramez Naamさんがこの内容を発表した際に様々な議論が巻き起こったようです。
ただ、厳密にムーアの法則に当てはまるかと言うとそうではありません。
ただ、氏が言いたかったのは、それだけ指数関数的に安くなっていくことは間違いなく、結果的には石炭を使って発電するよりも安くなるはずだ。と、言うことを言いたかったようです。
原文:「Smaller, cheaper, faster: Does Moore's law apply to solar cells?

これによると、太陽光発電にかかるコストは2020年には石炭を利用した火力発電より下回るはずだと彼は述べています。
そして、そのことが二酸化炭素排出を防ぐことが出来るクリーンな社会を生み出すとしています。

日本の場合、この発想をそのまま適用できるかと言うとそれは出来ません。
アメリカは古くから電気の料金を市場が決めてきた背景があり、日本ではそれを長らく政府が決めてきました。

ここ最近、電力の自由化によって比較的電気料金にも幅が出てきましたが、まだ自由競争ということろまでいっている訳ではありません。

そんな背景の違いがあるので、実際にこの言葉を鵜呑みにするわけにはいきませんが、大切なことは

「導入価格が指数的に減少している」

と、言うことで

【いつかは太陽光発電を導入することが当たり前の世界がくるかもしれない。】

と、言うことで、それが

【それほど遠くない未来にやってきそう】

だと言うことです。

事実、買い取り価格(本日、太陽光の買い取りをやめるかもしれないと言う案が出たと言うニュースが出ていました。2020年だそうです。)を前提として、ゼロエネルギー住宅にすると太陽光発電を設置した方が、かなりお得だと言う試算も可能となっています。

これから太陽光発電を導入しようと考えている方は、2020年近辺においてコスト的には一方的に得とは言い切れないが、殆どの場合得する。と、言っても過言ではない時期なのだと言うことを知っておくと良いでしょう。

 

快適空間とは何かを考える。外の繋がりも快適性を生む!!

私が近畿大学建築学部にて講義をしている、環境演習という授業の一環で、世界的に有名な設備や構造の設計会社である、Arup.Japanの設備部門の部長さんにお越し頂き、講演をして頂きました!

Arupとはどんな会社?

Arpuさんは、世界40カ国に法人を持ち、意匠(デザイン)設計以外の設計をやられている会社です。
ですので、有名な建築家とのコラボレーションも多数あります。

Arupさんが有名になったのは、誰もが不可能と思っていたシドニーのオペラハウスの設計を見事にやり遂げ、それを実現したところからだそうです。
設計者が手書きの図面を作成した段階では、その複雑さから建築は不可能と言われていました。
誰もがその実現を悲観していたそうですが、Arupさんが画期的な手法を考案し、建築の実現にこぎつけたそうです。
今では世界で一番新しい世界遺産だそうです。

世界中で手がけている建築の数々について、ご紹介頂いた中から特にこれから住宅を建てる人にも知っておいて貰えたらなと思った内容をご紹介します。

Arupさんの講演
Arupさんによる講演の様子

設備設計とは何の設計のことか

大きな建築物を設計する場合、設計には主に3つの種類が存在します。
それが、
 ・意匠(デザイン)設計
 ・構造設計
 ・設備設計

最初の2つはイメージがつきやすいと思いますが、設備設計とはあんまりピンとこないかもしれません。
しかし、この設備設計はとても奥が深く周りの環境を考慮した上で、屋内の環境を良くするために空調や換気の計画をすると言ったことが主な設計内容となります。

日本では関西空港における換気扇の設計を手がけたがのが最初の設計だったそうです。
関西空港にいくと、大きなドーム状の屋根があると思います。
あのドーム状の屋根には一切の空調設備が見えません。
それもそのはず、屋根の一番端に取り付いている、特殊な換気扇によって一気に空気の搬送が行われているのだそうです。

このように、設計する設備をどのように美しく見せるかというのも、設計の腕の見せ所なのです。

太陽光発電の未来は?

この内容については、後日改めてご紹介するとして、Rames Naamさんと言うアメリカの技術者の人の話を紹介されていました。
氏によると、太陽光発電の進化もムーアの法則と同じで、指数対数的に性能が良くなり、値段が安くなっていくと2011年頃に予想していて、
現実にその通りになってきているそうです。

ですので、「世界中の電力はPVで賄えるようになるはずだ」と言う予言がなされているそうです。
まだ太陽光発電を設置していない世帯は、この発言を参考に設置を検討しても良さそうですね!

人が感じる快適な空間とは?

講演の中で最も印象的だったのは、どんな空間が快適なのだろうと言うお話でした。
人が快適に思う空間は、オフィスの中にあるのか?それとも常夏の屋外のプールサイドにあるのか?
両者は環境因子を考えた時、ぜんぜん違うのですがそれをあえて屋内で用いる快適指標に当てはめると、どちらも同じような快適な数字になるとする。
しかし、実際に人間がどちらを選ぶのかと言うと、個人差はあるとしても、大半はプールサイドを選ぶのではないか。

そう考えた時に、何故屋外空間の方が良いと感じるのだろうか?

そういう考えさせられる内容でした。

そして、講演者の菅さんの考えでは
・快適さは環境の変化がなければ感じられない
・快適さは身体的と心理的、両方の感度の組み合わせ

だと、言う考えを述べられていました。

環境の変化が必要と言うのは、例えば「暑い」から「涼しい」に変化したときの感情などを指しているようなのですが、常に主体的に快適さを感じている必要があるのかどうかは私自身は多少違和感を感じましたが、心理的に良いと感じる快適さは必ずあるだろうなと思いました。

このことを、その場所に対する「期待値」と表現されていましたが、確かに常夏の屋外のプールサイドに期待するのは、屋内で過ごす場合よりも「暑さ」は多少寛容適で、風の強さに対しても屋内に比べるとはるかに寛容的になるのは間違い無いでしょう。
そのように考えた時、「色々な期待ができる場所を作る」と言うのはとても大切なことだと言う風に私自身は解釈しました!

その後の懇親会でも、色々お話をさせて頂き、とてもためになりました。
ありがとうございます!

 
 
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