とあるメーカーさんからのご依頼で、私が現在、非常勤講師としてお世話になっている、
近畿大学さんの講堂にて、普段仕事でプランナー、設計士さんをされている方々向けのセミナーにて、
お話をさせて頂きました。
会場には沢山の建築士さん、プランナーさん達が集まって頂き、
岡山の方から来られている方もいらっしゃいました。
今回のセミナーでは、省エネ住宅をテーマに近畿大学建築学部長である、
岩前教授がファシリテーターと言う立場で、セミナーを進行していき、
私はその中の第1部設計編と言うパートのお話をさせて頂きました。
このセミナーの趣旨について、全体感をお話されました
まず、岩前先生のお話では、
「快適」な住いを語る時、それは「満足感」を示している場合が多く、
個人が感じる「快適」には様々な種類があり、必ずしも「こうでないといけない」
と、言う事は無い反面、
「快適」というものは、「健康」とは一致しない場合も多く、
そこを混同しているフシがあるのは如何なものか。
と、言った趣旨のお話がありました。
そして、健康を維持することこそが、現在の社会問題である、
医療費や介護費負担の増大を緩和するための最も望ましい解決手段であり、
そのための家を考えることが重要であると言う、とても示唆に富んだお話をされ、
省エネと言う視点だけでなく、健康への配慮と言った視点からも家づくりを考えるべき
と、言ったお話の後に私へとバトンが渡されました。
設計士さんたちを前にお話させて頂きました!
そして、私の方からは「省エネ」を実践するための実際の業務に
沿ったお話をさせて頂きました。
同じ、設計士さんと言っても様々な立場で仕事をされています。
ですので、どんな方がいらっしゃってもある程度、話を聞いて良かったと
思ってもらえるように、基本的なお話から、最先端のお話までを散りばめて、
お話をさせて頂きました。
省エネには2つの大きな軸があり、そのどちらもバランスよく設計に活かすべきこと。
また、実現した省エネを可視化するためには、どんな方法があるのかとか、
実際に可視化して比べる方法、などと言ったお話。
そして、これから約30年先の未来に向けて予定されている省エネの話。
などをさせて頂きました!!
今回、公聴頂いた方の中には近畿大学で実際に教えておられる准教授の先生まで
いらっしゃっていて、大変光栄でした!
後日、この准教授の先生とジックリとお話をする機会があり、
今後、もっと密に連絡をとりあって、近畿大学での授業を盛り上げて行きましょうと
意気投合し、良い連携体制ができそうです。
私のお話の後は、石川組と言う香川県の工務店さんの石川社長による、
施工編のお話でした。
経験に富んだ面白いお話で、
「デザイン住宅」
の危うさについてのお話は、実際のご経験を元にしたお話で、
とても聞いていていためになるお話でした。
そして、それらの経験を踏まえて、
今後の住宅をどうするべきかと考えた結果、
やはり省エネ性能を兼ね備えた、快適で健康的な住宅が
一番良いと言う結論にたどり着いたそうです。
また、もう一つ印象的だったお話の中に、
リフォームの依頼があって、
「明らかに寒い」と感じるようなご自宅のお客様の家を訪ねた時、
その家の方は、まるで寒くないかのようにお話をされるのだが、
やはりあれでは健康には良くないだろうと感じ、アドバイスをしたのだが、
全く聞く耳を持ってもらえなかったと言うお話を聞いた時、
最初の岩前先生の話をリンクし、
「快適は、健康とは一致しない」
とは、まさにこの事なのだろうと改めて実感。
岩前先生が例えていた、
「タバコは快感(快適)に感じるが、健康ではない」
と、言うのがまさにこの事なのだと認識。
私自身も面白いお話が沢山聞けて、とても充実したセミナーでした!!
3年掛けて全国調査を行ってきた、スマートウェルネス住宅等推進事業における、
中間発表が先日行われました。
今回の調査では、断熱リフォーム前後における住い手の血圧や生活習慣、
身体活動量など健康への影響を調べてきました。
そして、中間発表でこの3年間で分かってきたことが発表され、
改めて、大阪でその内容についてお話頂く場として、シンポジウムを開催致しました。
私も大阪での活動内容について、お話させて頂きました!
沢山の方がご参加下さいました!
まずはこの調査を取り仕切っている委員会の幹事である、
慶應義塾大学の伊香賀俊治教授にお越し頂き、講演頂きました。
その内容でとても重要なことをここで挙げておくと、
◯まず、目安としてイギリスの基準などを参考にすると
「屋内は18℃以上」
であることが良いとされています。
◯今回の調査の結果、在宅時の居間の平均温度が18℃を下回っているご家庭が、
"約6割!!"
太田解釈:つまり、日本の住宅は改めて寒い!!と言う事が言えそうです。
◯断熱リフォームを行ったご家庭の在宅時の居間の温度は、上昇傾向
(有意に(明らかな)差がある場合で約2℃差)
◯室温の低下が血圧の上昇の影響は、高齢者ほど大きい
◯断熱リフォームにより、温度上昇があれば血圧も抑制される!!
◯温度上昇により、夜間頻尿にも改善がみられた!!
と、言ったことが主にお話されていた内容です。
もちろん、これら意外にも沢山のことが分析されていて、
あらゆる面にとって、寒さが人間の健康に悪影響を及ぼしていそうだということが、
示されています!!
慶応大学 伊香賀教授のお話
更に、今回はお医者さんの立場でありながら、
住居の寒さが、健康に悪影響を与えるのではないかと言う視点で、
調査研究されている、奈良県立医科大学の佐伯先生にもお越し頂き、
お話をして頂きました。
(※この3月に教授になられました。)
佐伯先生が、なぜお医者さんの立場でありながら、
このような研究に没頭されるようになったのかと言うと、
奈良県十津川村でのプライマリ・ケア診療(どんな病気でもまず、最初に治療に当たる)の、
ご経験が発端だそうです。
ここでは、どんな病気にも対処するのですが、その場で対処が出来ないとなった場合、
十津川村から他の医療機関に行くまでに、1時間~1時間半掛かるそうです。
更に、十津川村は広く、ご自宅で病気が発症し、そこからプライマリ・ケア診療を
受信するまでも道のりが長く、1時間も掛かるそうです。
急病の場合、最初の3時間でどのような対処をするのかで、その後が決まるそうで、
物理的に医療では難しいと感じられたそうです。
そこで、必要になるのが「病気を予防すること」
と、言う思いに至ったそうです。
そして、医学研究のトップジャーナルである、
「The Lanset」では「日本において1年に10万人が過剰に冬に亡くなり、これは煙草による死者数と同じ」
と報告されていて、予防をするなら温度が重要なのではないかと思われたそうです。
そして2010年より研究を始められ、様々なことが分かったそうです。
◯10℃違う環境で、血圧にどれだけ差が出るか?
冬は服を厚着していれば大丈夫という話があるが、実際には5.8mmHgもの差があり、
服を着ているだけでは、対処出来ないことが分かった。
◯寒い家に住む人は、塩分摂取量が多くなる!!
これは、マウス実験でも同様のことが分かっている。
◯外気温は関係なく、屋内温度が寒いと血小板の数が増える!!
血小板は多すぎると、血管が詰まる。
と、言ったことが統計学的にきちんと処理した上で、
分かってきていると言う事でした。
奈良県立医科大学 佐伯先生のお話