迷いヒヨコ
森のくまさん
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断熱性能を表すUA値とは?
家を建てるにあたって、重要な性能の一つが断熱性能です。
そして、建物の断熱性能を表す指標がUA値です。
UA値の計算方法はとても細かく方法が決められていますが、大きくは以下になります。
『家の外と中の温度が1℃差とした時の、1秒間に家全体から出ていく熱量』(下図)を
『家の表面積』で割ったもの
がUA値です。
このUA値は、数値が小さければ小さいほど性能が高いことを意味します。
今では様々な仕様でこのUA値が利用されていて、例えば東京や大阪といった場所で、ZEH(ゼロエネルギー住宅)にする場合は、UA値を0.6以下にしなければならない等と決まっています。
あなたが一番得するUA値とは?
断熱性能が良いと大きく2つのメリットがあります。
1つは省エネで快適な生活が出来ます。
もう1つは健康的な暮らしが実現できます。
それぞれどういう意味でしょうか?
健康的な暮らしについては、以下のリンク参考にして下さい。
参考 高断熱化した暖かい家は住まい手の健康に良い影響を与える!住宅に関する論文を分かりやすく説明迷いヒヨコ
ヒヨコさんの素朴な疑問に応えていきましょう。断熱は実は光熱費を抑え、省エネに繋がると言うお話です。
断熱で建物をスッポリと覆うと、その建物は魔法瓶のように熱が出入りし難くなります。だから、少しの暖房や冷房で暖かくしたり、冷やしたりすることができ、更に一度暖まった建物は外部の影響を受けて冷えるのに時間が掛かり、内部で冷やした建物は外部からの影響ではなかなか温まりません。
断熱をすると、冷暖房費を少なく出来るのです。
つまりUA値は、値が低いとそれだけ暖房に必要な光熱費も少なくて済むのです。
ただ、気を付けなければいけないのは冷房に掛かる費用は窓からの太陽からの熱の量によっても変わるので、詳細な光熱費を求める場合はUA値だけでは求められません。
しかし、大まかにはこのUA値が低ければ低いほど、光熱費が下がる(=省エネ)と考えて良いです。
参考 住宅の省エネ性(光熱費)について家づくり応援サイト注意)
実際の光熱費は、家電などを多く利用する家や人の数が多い家庭では、それだけ発熱が多いので、夏はより冷房が必要で冬は少なくて済みます。
建物や窓の向いている向き、周辺の建物から伸びる影、風や建物の隙間の量(C値)、利用する換気扇の種類や能力によっても変わります。
迷いヒヨコ
実は、最近の研究で冬場に暖かい環境で過ごしていると、風邪をひきにくくなったり、ヒートショックと言った循環器系の病気に掛かりづらいことがわかってきたのです。
参考 Cross-Sectional Analysis of the Relationship Between Home Blood Pressure and Indoor Temperature in WinterHypertensionそして、暖かいことによって回避できる病気を治療するのに本来必要であった費用を浮かせることができる。
そんな因果関係が明らかになる研究が発表されたのです。
それが下記の論文です。
こちらの論文では、家を暖かくすることによって節約できる医療費と光熱費を合わせて、現在の建材の値段を加味して考えると費用対効果が最も高い断熱性能があることを結論付けています。さて、それでは一体どんな断熱性能が理想的なのでしょうか?
まずは、こちらの表を見て下さい。
1・2地域 | 3地域 | 4地域 | 5地域 | 6地域 | 7地域 | |
G1 | 0.34 | 0.38 | 0.46 | 0.48 | 0.56 | 0.56 |
G2 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.34 | 0.46 | 0.46 |
G3 | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.23 | 0.26 | 0.26 |
【出典】http://www.heat20.jp/grade/
これは地域毎に定めた、推奨のUA値基準です。
最上段の数字で○地域となっているのは、例えば大阪や東京などの大半の地域は6地域に当てはまります。
沖縄は8地域なのですが、暖房に対する基準が無いためここでは省略されています。
1地域が北海道(の一部)です。
あなたがお住まいの地域がどの地域に当てはまるのか知りたい場合はこちらを参考にして下さい。
※ Excelファイルがダウンロードされます。
森のくまさん
UA値さえ満たせば快適になるか??
近年では、様々な媒体でUA値を単純比較したランキングなどを見かけます。
単純な数値の比較は分かりやすいのですが、この数字だけを見ていても本当のあなたの家が良い家になるかというと、そうではありません。
UA値はあくまで家全体を平均して熱がどれくらい出入りするのかを表した数値です。
しかし、実際の建物では天井や床、壁や窓などのそれぞれの部分で熱が出ていく割合が異なるのです。
- 壁の性能は良いが、天井の性能が劣る場合。
- 壁の性能はかなり良いが、窓の性能が劣る場合。
これらは、同じUA値として表されてしまう可能性があるのです。
特に窓の性能が低い場合、寒い日に窓からの冷気で不快な思いをすることがあります。
UA値だけではその快適性を表すことは出来ないのです。
- 窓はどのような性能のものが使われているのか?
- 窓は方角によって適切に使い分けられているか?
- 壁と床、天井の断熱のバランスは適切か?
- 熱橋はあるのか?
などと言ったことが適切に計画されているのかどうかを確認する必要があります。
(それぞれの目安については、後日掲載予定)
森のくまさん
UA値にはもう一つ大きな欠点があります。
実は換気による熱の出入りが考慮されていないのです。
換気には大きく2つの種類があります。
1つは家の隙間から出入りする換気の熱量で、漏気とも言います。これを表す数値としてC値が使われます。
C値(気密性能)についての詳細はこちらをご覧ください。
参考
気密をマスターしよう! ~気密測定とは?~ 家づくり応援サイト
2つ目は機械による換気によって出入りする熱量で、主に24時間換気扇による熱の出入りです。
機械による換気によって出入りする熱の量は、以前利用されていたQ値では反映されていました。
しかし、UA値ではこの熱量が考慮されなくなり、この点は改悪と言って良いでしょう。
(換気による熱損失を考慮したUA値を新たに作れば良いと思っています。)
実際に熱負荷と言うものを計算する時は、これらの換気による熱の出入りを全て含めて計算できます。
UA値だけにとらわれず、C値はどのくらいなのか、換気はどのように行われているのかにも注目しましょう。
森のくまさん
国における断熱の基準はかなり低い!今後改定される予定
現在、国において決められている断熱に関するいくつかの基準があります。
例えば、長期優良住宅、ZEH(ゼロエネルギー住宅)、などによって求められる断熱性能の基準はそれぞれ以下となります。
1・2地域 | 3地域 | 4地域 | 5地域 | 6地域 | 7地域 | |
長期優良住宅(平成28年基準) | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 |
ZEH(ゼロエネルギー住宅) | 0.40 | 0.50 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | 0.60 |
G2 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.34 | 0.46 | 0.46 |
どれも、G2の性能を遥かに下回っていることが分かります。
これは、大人の事情によってやむなく決められた非常に残念な基準になっているのです。(これを国の最高性能だとうたっている企業もあるので、かなり注意が必要です。)
2050年までにカーボンニュートラルを目指す。菅元総理が打ち出したこの方針に従って、断熱性能基準も変わることが決定しました。
今後は今までの基準の更に上の基準が出来ます。やっとG2の性能が国の基準として採用されることになったのです。
※ 2022年1月の社会資本整備審議会に報告され、3月に公布、秋には施行される予定
参考
<em>建築物エネルギー消費性能基準等小委員会 配布資料</em>国交省
これから家づくりを考えられる方は、この世の中の大きな流れも考慮して家づくりを進めて行ってください。
森のくまさん
3歳までのお子様が暮らす場合の注意点
断熱性能が良くなると家の中で極端な温度差を体験することが少なくなります。これは比較的大きなマンションでも同様のことが言えます。
40代以上の年齢の方にとっては体への負担が少なく極めて良好なことです。
参考 高齢者に多いヒートショックの原因とは?予防には住まいの温度と断熱性能が重要家づくりお役立ちサイト反面、小さなお子さんがいるご家庭は知っておくべきことがあります。
幼児期に熱帯に移住した日本人は汗腺(汗を出す線)の数が多いことが分かっています。また、ロシア人と東南アジアの人を比べると汗腺の数が違う事も分かっています。
汗腺の数は2~3歳までに発達し、それ以降では変化がありません。
つまり、小さなお子さんがいる場合は、なるべく外に連れ出して温度の変化を体験させてあげる必要があります。
場合によって酷暑で無い日は、エアコンを止めて窓を開けて過ごすことも一つの手段です。
(家にご高齢の方が同居されている場合は、熱中症にならないように家の中が30℃を超えないように注意する必要があります。)
そのような住生活には、あなた自身が家のことを良く知り、適した工夫も必要となるのです。
森のくまさん
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