迷いヒヨコ
森のくまさん
Contents
ヒートショックとは?ヒートショックの原因を探る
ヒートショックとは、急激な温度変化が体に及ぼす影響のことです。
暖かいところから急に寒いところへ行くと、急な温度変化が原因で血管が縮まります。
これによって、血管内に急な圧力がかかり、循環器と呼ばれる心臓や脳などの血管に負担を与えるのです。
また、逆に寒いところから急に暖かいところへ行くと、血管が急に広がりその血圧変動についていけず、そのまま気を失うことがあります。
これらは特にご高齢の方に多くあらわれます。
しかし、対策が必要なのはご高齢の方だけではありません。
若い頃からの蓄積が効いてくるのです。
どういうことか、順番に見ていきましょう。
ヒートショックが発生する代表的な例として、冬場に寒い脱衣室・浴室に入ることが挙げられます。
以下のグラフを見て下さい。
このグラフは、左からお風呂に入る順番を表しています。
赤と青の変化は、暖かくした場合(赤)と、寒くした場合(青)とでの血圧の変化です。
寒い脱衣室(青色)で入浴前の服を着た状態から、脱衣後の服を脱いで浴室に入るタイミングで急に血圧が上がっています。
イベントと言いますが、ヒートショックを起こすのはこのタイミングです。
またお風呂に入った洗浄後、浴槽内に入ってお湯に浸かるタイミングでは、急に血圧が下がってしまいます。
この時にもこの急な変化に体がついていかず、気を失ってそのまま溺れてしまう事があります。最悪の場合は溺死となります。
その後、浴槽内から上がる際、そして服を着る際にも急激な血圧変化が発生します。
反対に暖かい脱衣室(赤色)では、服を脱いでも浴室に入っても、比較的大きな変化はありません。暖かい風呂に浸かった場合、それなりに血圧は下がりますが、それほど極端ではありません。
つまり暖かさが、体への負担を軽減しているのです。
このように温度差が大きいところへ移動する際は必ず体に負担(ヒートショック)をかけている訳です。この度々の負担は40代くらいの若いうちから知らない間に血管に傷を負わせているようです。
この蓄積が年を取るにつれて、目に見える病気(疾患)となって現れるのです。
ヒートショックが怖いのは、若いと思っている間でも知らない間に体を蝕んでいる可能性もあると言うことです。
迷いヒヨコ
迷いヒヨコ
実は日本では寒さの影響で亡くなる方の異常な多さが諸外国に比べて際立っています。
これは、冬と夏の死亡者の割合を比較したグラフです。
傾向として、温暖な国ほど冬になると、亡くなる人の割合が増えるのです。
逆に寒いとされる国々は季節間の差が少なくなるのです。
日本は一体どの位置になるのでしょう?
大体、イギリスと同等になります。
日本はイギリスよりかなり南に位置する温暖な国なのに、寒くなると人が亡くなる割合が多い国の部類に入ります。
これは何を意味しているのでしょうか?
日本国内に目を向けると、日本においても北海道が最も季節間で死亡割合が変わらず、青森県や沖縄県でもこの差が小さいです。反対にこの差が大きいのは、栃木県、茨城県、山梨県、愛媛県、三重県と言った比較的寒い印象が少ない地域となっています。
寒い地域の国々や北海道はなぜこの差が少ないのでしょう?
実は北海道に行くと、家の中がとても暖かいのです。これはドイツなどのヨーロッパの寒い国々でも同様です。つまり、寒いことを意識して冬の準備をしっかりしているのです。
逆にこの差が大きい地域は、比較的冬場は暖房を入れずに我慢して過ごしていることが多いようです。
このグラフは、毎年の交通事故と家庭内事故の死亡者数を調べたものです。
家庭内事故で最も多いのがヒートショックによる急死です。
交通事故は2018年頃から年間3000人を割っています。
家の外で亡くなるのは、自然災害の場合以外では交通事故が主です。
ですので、現在の世の中では屋外で亡くなるケースはかなり減ってきているのです。
これは、飲酒運転が厳罰化されたことや、車の性能自体が向上したことによるものとされています。
反対に外で亡くなることが少なくなれば、病院か自宅で亡くなる人が増えるはずです。実際に増えているのは屋内で亡くなる人の数です。
今では、外で亡くなる人の数を4倍も上回っています。
また、世界的な医学雑誌である「The Lancet」では日本で寒さが原因で亡くなる人の数は、諸外国に比べて年間12万人も多いことが報告されています。
日本において、1年に12万人が過剰に寒さが原因で冬に亡くなり、これは煙草による死者数と同じ
Mortality risk attributable to high and low ambient temperature: a multicountry observational study
迷いヒヨコ
下のグラフは、厚生労働省が出している平成16年の人口動態統計特殊報告です。
こちらでは季節別の循環器系疾患(脳血管疾患、心疾患)の割合が冬場になるとかなり多くなっていることがわかります。
それに比べると、がんは季節変動がありません。
循環器疾患はこのように寒さの影響を明らかに受けるのです。
つまり、寒さで影響を受けるのは主に血管に対してであることが分かるのです。
このように日本では明らかに諸外国と比べて寒さの影響を受けて亡くなる方が多いのです。
寒さに慣れていると勘違いしてしまうと思いもよらない結果になることが考えられます。
参考に循環器系疾患の研究でとても有名な苅尾七臣先生のコメントが載ったサイトを紹介しておきます。
参考 自分の血圧の変化を知るって大切!STOP!ヒートショック森のくまさん
最近では、夏場の暑さによる熱中症が話題になることが多くなってきました。
現状、熱中症で亡くなられる方はそれほど多くはありません。
ただし、地球温暖化の影響と共に年々その数が増えてきているのも事実です。
しかし、現時点では屋内においての死亡事故で多くを占めるのが、転倒およびヒートショックによる事故死となっていて、冬の対策を急ぐことに越したことはありません。
森のくまさん
ヒートショックの予防に必要な、断熱化と室内温度
迷いヒヨコ
ヒートショックの主な原因として、暖かい場所から寒い場所に移動することが負担になるのでした。
特に浴室は裸になるのでその影響を受けやすい場所です。
しかし、ヒートショックの事例は夜中にトイレに起きた場合の寒いトイレ内でも発生します。
このような部屋間の温度差はどこまで無くせば良いのでしょうか?
浴室やトイレだけ暖かくすれば良いのでしょうか?
このヒントを得るのにスマートウェルネス住宅等推進事業における調査の結果が参考になります。
参考 スマートウェルネス住宅等推進事業について国土交通省スマートウェルネス住宅等推進調査事業この調査では、ヒートショックの要因となる血圧変動と室温との関係を明らかにするために、平成26年から全国で5年間かけて断熱リフォームの前と後で温度の状況や血圧の状態がどの程度変わったのかを調査しています。
こちらの調査で、様々なことが分かってきたのですが、その中で部屋間の温度差に注目した結果があります。
つまり、リビングだけ暖かくしていても他の部屋が寒いと、相対的に血圧が上がってしまうのです。
本当の健康安全性を実現するためには、浴室やトイレだけを暖めるだけでなく家全体を暖かくして屋内全ての温度差を無くす方が、効果があるのです。
(もちろん、取り急ぎの対策として浴室やトイレを暖かくすることも重要です。)
これを実現するためには、暖房機を沢山置くという方法が考えられますが、しかしこれでは省エネでなく単なる増エネになってしまいます。
省エネルギーを実現しつつ、部屋間の温度差を無くそうとすれば、家自体を断熱して魔法瓶のようにしてしまえば良いのです。そうすることで、無駄に暖房することなく家全体の温度を上げることが可能となるのです。
どんな断熱性能を目指すべきかは以下を参考にして下さい。
参考 <em>あなたの住宅に最適な断熱性能UA値とは?</em> 家づくりお役立ちサイト森のくまさん
先程、紹介したスマートウェルネス住宅等推進事業では、他にも様々なことがわかっています。
その中には、どのような温度が適しているのかも明らかにされています。
以下のグラフを見て下さい。
このグラフによると、年齢別でどの程度温度の影響を受けるのかがわかります。
特に高齢になればなるほど、高い温度でなければ血圧を低くすることが出来ません。
高血圧は収縮期血圧が140mmHGを超えることを指します。
60~80歳の間で高血圧を避けようとすれば、
と言えます。
冬に、家中全体を22℃程度にするとなると、暖房機を至るところに置いただけではただただ光熱費が掛かってしまいます。
以上から、省エネを維持しつつ実現するためには断熱化がとても重要となるのです。
スマートウェルネス住宅等推進事業では、高い温度で暮らした場合、他にも様々なメリットがあることがわかっています。
以下にそのメリットを羅列します。
- 断熱前と後では、全体で平均的に血圧が3.5mmg低くなった。
- 18℃未満18℃以上の環境で住む人を比べると、寒いほうが肩こりの割合が3.2倍、腰痛の割合が2.0倍多くなる。夜中にトイレにも起きやすくなる。総コレステロール値、LDLコレステロール値も高く、心電図異常所見も多い。
- 室温を高くするより、床面温度を高くする方が高血圧は少ない。
- 暖かい家の方が活動量は多くなる。
このように、血管への影響だけでなく寒いということは様々な症状の原因となっていることが分かってきました。
この意味でも、しっかりと断熱をして簡単に暖かい環境を実現できることがとても大切であると言えます。
こちらは、厚生労働省、国土交通省が協力して日本サスティナブル建築協会が作成した資料です。
こちらにも、ヒートショックの対策として断熱性能を高めることの重要性が記されています。
森のくまさん
コメントを残す