「長期優良住宅」と言う言葉を聞いたことはありますか?
家づくりをする段階において、一度は検討を行うべき長期優良住宅。
導入のためにはその分の費用が掛かりますが、メリットやデメリットを理解してあなたの家づくりに取り入れるべきかどうかを判断しましょう。
尚、この長期優良住宅は、国が政策的に普及を促していると言う状況もあり、補助金や助成などが沢山用意されていますので、内容についても紹介します。
このような背景もふまえて、あなたの納得のいく選択を行いましょう。
長期優良住宅とは?
長期優良住宅とはどんな住宅なのでしょうか。まずは、国交省が謳っている長期優良住宅を見てみると。
従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目的として、長期にわたり住み続けられるための措置が講じられた優良な住宅
引用:「国交省 長期優良住宅のページ」
ここ数十年、「住宅は30年で寿命がくる。」と、言われてきました。
しかし、実際に壊されるのは物理的な寿命によって30年で壊されてきたのではなく、社会的な状況や住む人の心理的に「新しいものが欲しい」と思う気持ちとあいまって、壊されてきた過去があります。
そのような時代の反省を生かして、「今後100年経っても、壊されない住宅」を目指して確立されたのがこの長期優良住宅なのです。
長期優良住宅は国(が指定する機関)による認定通知書が発行されて始めて長期優良住宅となります。そのためには、いくつかの条件や基準を満たしている必要があります。
長期優良住宅とするためにはどのような費用が発生し、住むあなたにとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
長期優良住宅の基準や条件
長期優良住宅として認定して貰うためには以下のような9つの基準があります。
主に家の性能やメンテナンスに関する基準です。
これらの基準は、「家を長持ちさせる」ための条件となっています。
以下に木造戸建て住宅の一般的な基準の概要を記します。
- 劣化対策:木造住宅の場合は床下空間の高さを確保してメンテナンス用の点検口を何箇所か設ける
- 耐震性:耐震等級を2以上とする
- 維持管理・更新の容易性:メンテナンス用に専用の給排水配管を行う
- 可変性:共同住宅のみのため条件なし
- バリアフリー性:共同住宅のみのため条件なし
- 省エネルギー性:断熱等性能等級4(最高等級)とする
- 居住環境:住む地域の計画に従う
- 住戸面積:延床面積が75m2以上であること
- 維持保全計画:決められた設備等について、定期的な点検・補修の維持管理計画を作ること
これらの条件を全て満たしていることが確認された住宅に対して、国が指定する機関による認定通知書が発行されます。
申請については、工事が始まる前に役所にその建物の工事を認めて貰うための確認申請というものを役所または役所に変わる代理の機関に提出します。その確認申請のタイミングと同じ時期に申請書類を一式用意して申請します。
ですので、計画の段階で長期優良住宅としての計画をしておく必要があります。
工事が始まってから、急に長期優良住宅にしたいと考えても通常よりも多額の費用が発生しますので、もし本気で長期優良住宅にしたいと考えているのであれば、事前にその希望を伝えておく必要があります。
長期優良住宅は必要?そのメリットとは?
先にもあったように長期優良住宅は、国が施策として普及を推し進めています。
ですので、補助金や助成金と言った面でも沢山のメリットが用意されています。
補助金や助成金に関する内容は後で紹介するとして、ここではそれ以外に挙げられるメリットを紹介します。
<メリット1 住宅の仕様が良くなる>
恐らくここが一番のメリットです。先に上げた9つの基準がこれに当たります。
しかし、ここで言う仕様はあくまで長期優良住宅における仕様です。
例えば、耐震等級。こちらに関しては2以上で良いことになっていますが、耐震等級3程度は最低限欲しいと感じるかもしれません。
ですので、長期優良住宅は仕様が良いと言えど、それで満足のいくものになるかどうかは別の話です。
<メリット2 メンテナンスしやすい>
維持保全計画書が作成されるので、メンテナンスしやすい。
これは、車の点検と一緒で何年経ったらメンテンナンスしましょうと案内が来ます。
従来、このような内容は一部の大手メーカーでしかやっていなかった事ですが、今では長期優良住宅にしさえすれば、どうようなサービスを受けられるように体制が整っています。
こちらも大きなメリットとなります。
法律で決まっているのは、
- ・10年毎に点検を行うこと
- ・少なくとも30年以上は点検を行うこと
- ・点検箇所は
構造耐力上重要な部分
雨の侵入を防止する部分(屋根・外壁・窓まわり)
給水・排水設備 - 点検の結果、必要に応じて修繕を行う
- その状況に応じて、維持保全計画の見直しを行う
こととなっています。
また、地震や台風の際には臨時点検を行う必要もあります。
これらの点検は、通常立ててくれた企業や工務店が行う場合が殆どです。
<メリット3 住宅ローンの金利が安くなる>
これは住宅ローンの借入先によって違ってくるところです。
「フラット35S」と言う政府が100%出資する政策金融公庫と言う会社が貸し出す住宅ローンにおいて適用されます。金利優遇と言う形で、通常に住宅ローンを借り入れるよりも最初の5年または10年金利が0.25%低く設定されます。初期の借り入れが大きい段階での低金利はかなり効果が高いです。
通常の銀行において、このような優遇はあまり見かけません。
<メリット4 火災保険が安くなる>
こちらもどこの保険会社を利用するかによって変わってくることではあります。
しかし、30%近く割引のある保険商品もあるようです。金銭的には大きなメリットと言えるでしょう。
<将来予想されるメリット>
将来的に予想されているメリットとしては、もし自宅を売りたくなった場合に高値がつく。
と、言うことです。
国が認めた長期優良住宅の適合書があり、しっかりメンテンスを施した住宅には、将来的にしっかりとした資産価値が計上されるようになるという予想が多くあります。
恐らく、この資産価値の向上のために国は施策として推進していると言う話も聞いたことがあります。
今までの日本の住宅は25年も経てばその建物としての資産価値はほぼ無くなってきました。※構造種別によって違いがあります。
日本人の財産は何もしない内にときが経つにつれて、削られていくと言う仕組みになっていました。
これは、諸外国から見て異常な仕組みで、早期の改善が求められるところでもあります。
つまり、日本国民の将来の経済的豊かさのためにこの長期優良住宅認定制度が位置づけられているのではないかと言う話もあるのです。
長期優良住宅にするなら知っておきたいデメリット
今まで長期優良住宅にすることに関する良い面を見てきました。
しかし、物事には何でもメリットがあればデメリットも共存するはずです。
ここでは、長期優良住宅にすることによって発生するデメリットについて紹介したいと思います。
<デメリット1 初期費用が掛かる>
これは、ある意味で当たり前のことなのですが長期優良住宅とするためには仕様がよくなります。
ですので、そのための初期負担がアップします。
住宅ローンを組む方はローン負担が増えることになりますので、借入限度額ギリギリの方は一考の余地があります。
しかし、そうでない場合は先程紹介したメリットやこれから紹介する補助金・助成金・税制優遇などによって、後で十分に返ってくることが殆どですので、金銭的負担がギリギリで無い場合は初期費用は掛けても良いものと考えられます。
<デメリット2 申請に時間が掛かる>
これは時期によって違いがあるので、一概には言えません。
しかし、一般的には長期優良住宅なしで建築工事の申請を行うのに比べて、申請期間が長くなることが殆どです。
長期優良住宅の申請がない場合は2週間程度に対して、長期優良住宅の申請には1ヶ月程度掛かることが多いです。
ですので、その分工事が始められるのが遅くなります。
<デメリット3 メンテナンスプレッシャーが高くなる>
最初からきちんとメンテナンスするつもりの人は問題ないところですが、点検が定期的に行われ、必要に応じてメンテナンスを求められます。通常、このメンテナンスは有料となりますので、その際には潔く応じる必要があります。
これを避けるためには、最初からメンテナンスの回数が少なくて住む材料を使っておくことが対策として挙げられます。特に屋根材や外壁材については、注意が必要です。
<デメリット4 メンテナンス状況を報告が必要>
もし、行政から求められたらメンテナンス状況を報告しなければならない。
メンテナンスすることが前提となっています。
ですので、もし行政から求められた場合、そのメンテナンス状況を報告しなくてはなりません。
<予想されるデメリット>
先程、予想されるメリットとして資産価値の向上を挙げました。
いつでも売ったら手元にお金が入ると言う心の余裕が出来る反面、
「実はその分固定資産税が上がるのではないか」
と言うまことしやかな噂もあります。
しかし、私としては国の施策が国民の資産価値向上と言う視点なのであれば、このような事は優遇かなにかで行わないのではないでしょうか。
もちろん、税金の財源確保がどうしても更に必要となった場合は白羽の矢が立つ可能性も無くは無いと思いますが。
以上、デメリットを見てきましたが、それほど大きなデメリットは無いのではないかと考えられます。
ぜひ、皆様の家づくりの判断に役立てて下さい。
長期優良住宅に関する税制・補助金
<税制>
税制優遇は時限立法であることが殆どです。つまり、優遇時期に期限があります。
ご自身の計画がこの期限に間に合うかどうかを確認することがとても大切です。
長期優良住宅とした場合の代表的な税制優遇には以下のようなものがあります。
・住宅ローン減税(所得税に関する減税措置)の拡大(2021年3月31日まで)
・登録免許税、不動産取得税、固定資産税の軽減措置(2020年3月31日まで)
住宅ローン減税は世帯年収によって変わってきます。
概要は以下に示されているので、どれぐらいの減税が受けられるのかを確認してみて下さい。
また、住宅ローン控除に関しては、長期優良住宅かどうかに関わらず住宅を建築することに対する減税のメインとなっています。毎回のようにこの控除が無くなる話が出てきますが、結果的に継続となり続けているのがここ10年近くの傾向で、減税の額についての変更が行われるケースが殆どです。
このまま継続が続くのかまだ分かりませんが、参考にして下さい。
<補助金>
補助金については、毎年変更が行われます。
また、時期にによって受けられる補助金も変わってきますので、あなたの計画が本当にその補助金の利活用に適しているのかは、改めて調べる必要があります。
しかし、補助金は国や地方自治体がその税金から補助をしてくれるとてもありがたい仕組みです。
この補助金は知っていれば有効に活用できますが、知らないとそのまま素通りすることになります。
ですので、「使える補助金が無いか?」と、言うことは一旦ご自身で調べてみることが必要となります。ネットで調べるのか、ハウスメーカーや工務店の担当に聞いてみるのか、調べ方は様々です。
ただし、担当者に聞いてみてもその担当者が知らない場合もあります。ですので、ご自身で調べてみることがとても大切です。
補助金は、国が政策として企画するもの。県や市の単位で企画しているもの。が主にあります。
県や市の単位で企画しているものは、直接役所に聞くほうが早いことが殆どです。
直接、電話をして担当の部署に聞いてみて下さい。
国が企画している補助金は、様々な種類のものがあり、また素人が理解するには難解なものもあります。
どんなものがあるのかは、国交省や経産省のホームページや配布物で確認出来る場合がありますが、それがご自身の家づくりで使えるのかどうかは、企業や工務店の担当に確認して貰いましょう。
長期優良住宅仕様の家づくりで利用できる補助金の代表的なものとして、
「地域型住宅グリーン化事業」
と、いうものがあります。これも毎年名前を変えたり、補助内容が変わったりしています。
具体的にどのようなものかは、都度確認の必要がありますが、通常100万円程度の補助金が用意されていることが殆どです。
現在、使える補助金があるかを確認する場合は以下から探して見てください。
<合わせて読みたい>
参考 ZEH(ゼッチ)は必要?ゼロエネルギー住宅のメリット・デメリット必要な住まいの性能
コメントを残す