遮熱

遮熱とは、熱を運ぶ方法の三原則である「対流」・「輻射(放射)」・「伝導」の内、熱の輻射を遮る事を言う。代表的な例として太陽の直射日光を防ぐことである。

遮熱と断熱の違い

熱の輻射(放射)とは、熱を運ぶ方法の内、熱を電磁波(光)として運ぶ方法であり、その主な波長は「赤外線」とされている。
太陽の直射日光によって、温められるのは熱の輻射により温められる事が原因である。

熱とは分子の振動により発生し、振動が多いと熱くなる。熱エネルギーの伝わり方には3種類ある

  1. 伝導:個体の中で熱が伝わること。例として、鍋やコップの熱
  2. 対流:液体や気体の中で熱が伝わること。例として、風呂のお湯やエアコンの空気の熱
  3. 放射(輻射):光(赤外線)として伝わる熱。宇宙などの真空中でも伝わる。

断熱は、主に「対流」と「伝導」を防ぐ方法であるのに対し、遮熱は主に、熱の輻射(放射)を遮る方法として用いられる。

住宅では、夏の暑さを抑えるために太陽光からの熱を防ぐ事が極めて重要である。

太陽の放射(直射日光)を遮熱する事例

住宅に必要な遮熱対策

住宅を夏に温めているのは、他でも無い「太陽の光」なのである。

夏の熱の出入り
夏の熱の出入り

このように、夏に熱の侵入が多いのは窓からであり、窓から熱が浸入する一番の原因は『太陽からの直射日光』である。これを遮熱する必要があるのだ。

壁や屋根などでは、太陽光の放射を一度「熱」として受け止め、それ以上伝わらないように断熱材で「伝導」を防ぐことが一般的である。一方で沖縄にような蒸暑地域においては、遮熱する方が効果が高い。

一方、窓では壁や屋根とは違い、ガラスが輻射(放射)を受け止める能力に限界があるため、ガラスを通過して家の中を温めてしまう。

日射の透過
窓では直射日光が透過する


その為、窓ガラスには「遮熱」によって、輻射(放射)による熱の侵入を防ぐ必要がある。

遮熱のための材料やデメリット

遮熱のためには、専用の材料を利用して遮熱する方法があるが、デメリットもしっかりと理解した上で遮熱を行う必要がある。

遮熱シート

遮熱シートは主に窓ガラスに遮熱するシートを貼り付けて行う遮熱方法である。熱を防ぐほかに紫外線を防ぐことも可能で、床等の色あせを防ぐことも可能となる。

この場合、内側からシートを貼り付けるため、窓ガラス自体に熱が溜まる。熱が一部に溜まりすぎると、ガラスが熱割れを起こすことがあるため、注意が必要である。

さらには冬場に暖かい日射を取り入れることで暖房の代わりとなるところが、これを防いでしまうため、住宅の場合では沖縄のような蒸暑地域(じょうしょちいき)を除いては、年間トータルでは光熱費を高くする結果となることが多く、慎重な判断が必要である。(実際に光熱費がどうなるかを知りたい場合はプロに計算して貰う必要がある)

遮熱塗料

壁や屋根に遮熱をする場合は塗料を利用する。夏の暑さを防ぐことができ、工場などの労働環境の改善にはよく用いられる。

住宅の場合は遮熱シート同様に冬場の暖房費が高くなってしまい、年間のトータル光熱費が高くなる。

また、塗料であるが故に数年すると塗料が剥がれ効果が薄くなる。

遮熱ガラス

遮熱の方法として、ガラス自体に金属皮膜を貼る方法(この種のガラスをLOW-Eガラス等という。)。シートに比べて満遍なく膜が形成されているため、熱割れを起こす危険性が減る。ガラスが二重になった窓のどちらか一枚がLOW-Eガラスとなっていて、部屋側にLOW-Eガラスを向けるのか、外側に向けるのかによって使い分けることが可能となる。このように最適な設計をすることをパッシブデザインと言う。

参考 パッシブデザインとは?メリット・デメリットを知る!必要な住まいの性能

窓の外部から遮熱をする方法

窓を遮熱をする方法としては最も効果が高い

このため、庇や簾(スダレ)などによって遮る方法が有効な手段となる。窓の内側で遮熱する方法としてカーテンやブラインドなどによって遮る方法等があるが、効果は低く理想的な遮熱は窓の外側を遮熱することである。
(理由については、以下のリンクを参考にして下さい。)

参考 東西面に入る日射の防ぎ方必要な住まいの性能

「遮熱」は夏の暑さ対策として利用されるが、反対に冬場に「遮熱」してしまうと逆効果になり、暖房に必要なエネルギー量が余分に必要になる。

このため、遮熱の計画は必要な時に機能し、不要な時は機能しないように計画する必要がある