パッシブデザインとは?メリット・デメリットを知る!

パッシブデザイン

くまさんが2012年に北海道で体感したパッシブデザイン住宅の動画。
日射を上手く取り入れて、マイナス14℃の極寒の北海道においても暖房無しの住まいを実現している。中身はどのようになっているのか?手っ取り早くパッシブデザインを知りたい人はまず動画をご覧ください。

パッシブデザインで出来たパッシブハウス

迷いヒヨコ

最近、パッシブデザインと言う言葉を聞いたことがあるのですが、これはどんなデザインのことを言うのでしょうか?家づくりに役立つのでしょうか?
そうだね、最近でこそ色々なところで目に、耳にするようになったパッシブデザインだけど、実は歴史は古くて昔からこのような設計手法があったんだ。今日はパッシブデザインがどんな設計手法なのかをお話しするとしよう。

森のくまさん

パッシブデザインとは?

元々は省エネ手法を表す言葉で、パッシブ手法と言う言葉があり、その反対の言葉としてアクティブ手法と言うものがあります。

これを設計手法として表したものをパッシブデザイン(パッシブ設計)と言い、この手法によって出来上がった住宅をパッシブハウスと言います。

また、パッシブ手法の反対語である、アクティブ手法に関してはアクティブデザインとはあまり言いません。

パッシブデザインには主に、太陽の熱を利用した設計手法があり、また建物を断熱化することもパッシブ手法の一つとして扱っています。 この他にも蓄熱や調湿と言った手法も存在します。パッシブハウスは、日本において特段これがパッシブハウスと言う公的な決まりは無く、各々が自由にパッシブハウスと表現しています。

迷いヒヨコ

自然の力を利用するのがパッシブデザインなのですね!なんだかワクワクします^^)

パッシブデザインの4つの特徴

断熱化以外のパッシブデザインには主に自然の太陽の熱や光、風を利用した手法が挙げられます。
それぞれ、どのような特徴が存在するのかを例を見ながら解説していきましょう。

太陽の熱を冬場に屋内に取り入れたり、お湯を作るために利用するとどれぐらいの熱量になるのか?

パッシブデザインのなかで最も省エネ効果が高いのが、冬に太陽の熱を屋内に取り入れる、あるいは太陽の熱でお湯を作る手法です。

冬場に車を運転していることを思い浮かべて下さい。太陽の日射が直接当たると暖かく感じ、それが陰ってしまうと急に寒くなる。このような体験をしたことは無いでしょうか?

既に体験的には知っているのに、実生活にあまり活かされていないことの一つに、太陽の熱の利用が挙げられます。

例えば直接真冬に窓から入って来る日射の熱量はどのくらいになるでしょうか?

(理科年表(71年~00年の平均)より、『つくば市』の1月の正午における状況を想定。大気透過率(太陽の熱が大気を通過する割合)は0.77、大気透過前の冬の日射の強さを1037[W/㎡]、真南にむいた窓に高度32.8°の直射日光が入るとし、ブーゲの式により計算。)

計算をすると1㎡当たり、537.28[W]の日射が窓の外面に到達することになります。

日射熱取得率(窓の外面から家の中に入る熱の量の割合)が0.32のLow-E複層ガラスで、幅1.62m、高さ2mの大きさのガラスがついた、外への出入りが出来る掃き出し窓を想定します窓の外面から部屋の中に入ってくる熱量を計算すると、557.05[W]の熱量が窓から入ってくることになるのです。

これは、一般的な4人用のコタツ程度の熱量があり、ホットカーペット2畳分位の暖かさと同じ程度なのです。

また、G2程度の住宅で延べ床面積が100㎡の総2階住宅であれば、3071[W]の熱量があれば、暖房として十分なのですが、正午の時間帯に太陽の熱を上手く取り入れると、2割程度の熱負荷をカバーできることになります。窓1枚でこれだけの熱量を取得できるのですから、相当の効果です。

下に1日に届く直達日射量の変化を計算した図を示します。

正午があたりが一番多いですが、それ以外の時間も常に暖かい日射が入って来ることが分かります。

如何でしょうか?

窓から熱を取得することが、どれだけ暖房に貢献するかが分かるかと思います。

また、ここで太陽からの熱を仮にすべてお湯を沸かすために(正確にはそのまま利用出来ませんが、簡単のために)利用するとします。

すると、

100%利用出来たとすると、15.71[MJ]利用できることになります。

電気温水器などでも一日で必要な熱量は22.8MJ程度とされていますので、

冬場でもお湯を沸かす熱量としては、かなりの割合が太陽の熱で賄えることになります。 この熱を暖房やお湯を沸かすエネルギーに利用することで省エネが可能となるのです。

迷いヒヨコ

太陽の熱を利用すると、そんなに暖かく出来るのですね。これを上手く利用するのがパッシブデザインなのですね!

太陽の熱を夏に遮熱するにはどの方角が大切か?

今度は、夏場を想定してみましょう。

計算式は先ほどと同じです。夏場なので大気透過率0.64、大気透過前の日射の強さを972[W/㎡]として、残りは同じ条件とします。

すると、

南面窓に届く熱量は正午で185.88[W/㎡]となり、冬場に比べるとかなり減ることが分かります。(それでも決して無視できる熱量ではありませんが。)
※ 先ほどとは違って、ここでは窓にはいる直前の日射量にしています

また、東西面も同様の計算をすると、下記のグラフのようになります。

なんと、夏場の場合は東西面に届く日射の量の方が南に比べて倍程度になることが分かります!!
(南面を表す灰色よりも、東西面を表す青やオレンジの点々の方が大きくなっている)

つまり、夏の場合は、窓の大きい南面から入って来る日射と共に、東西面から入って来る日射を防いでやる必要があるのです。 夏場は、太陽からの熱を遮る必要がありますが、南側より寧ろ西側や東側が重要なのです。

また、夏場の計算はもう少し複雑で、実際には夜間放射や地面からの反射光にも配慮してやる必要があるのです。

これらの特徴を良く理解した上で、窓の大きさや配置を検討する事が、パッシブデザインの基本なのです。

迷いヒヨコ

夏と冬とでは少し考え方が違うのですね。パッシブデザインって難しいのですね~

太陽の光の取入れ方法

太陽の明るさは、照明に比べると比べ物にならないほど大きいです。

例えば、照明を利用すると床面の明るさを500[lx]程度にすることが可能です。

太陽の直射日光の場合、屋外では地面の明るさが、晴天の正午時なら100,000[lx]、直射日光で無くても2,000[lx]以上あるのです。

これを利用しない手は無いでしょう。

都会においては、隣接する建物が直近で1階に明るさを届けるのは困難になります。そう言った場合でも吹抜けの活用や欄間の活用、ストリップ階段の活用なので、光を奥まで届かせる工夫が出来ます。(これを導光と言います。) こうして、昼間は昼光(太陽の光)を上手く利用して照明の不要な生活にすることが可能なのです。

風を利用する方法

風は、春や秋、夏場の夜などに利用できるととても気持ちが良いです。

屋外が温度的にも湿度的にも良い状態の時は、風が家の中でも流れるように窓を開けて風が流れるようにします。 設計上の窓の設置位置の工夫によって、採風が確保できるようになります。

(風の利用については後日追加予定)

パッシブデザインの事例とデメリット

迷いヒヨコ

実際、パッシブデザインってどのような設計をしているのですか?

南面からの日射の防ぎ方

冬場は窓からなるべく直射日光を採り入れることが望ましいのでした。
けど、夏場は逆に遮りたいわけです。
この両者反対の状況を打開するには、一体どのようにすると良いのでしょうか?

実はこれ、昔から日本人が得意としてきた手法を利用するのです。それは何か?

軒の出です。

軒の長さを上手く調節することで、夏場は日影にして冬場は直接取り入れることが可能なのです。必ず軒でなくても、上部に配するバルコニーでも構いません。
では、どのように長さを決めると良いのでしょうか?
これは太陽の高度の差を利用して設計します。

夏場は太陽の高度が高い。このため軒の長さに応じた日影ができます。

反対に冬は太陽の高度が低い。つまり同じ軒の長さでも夏よりは日影が出来にくいのです。

この差を利用して、軒の長さを決めます

日射コントロール

目安として、軒の長さを窓の高さの〇分の1にしてやると良いと言うのがありますが、これはあくまで目安です。

また、最近では9月などの秋口でもまだ暑い日が続きます。

なので、単純に窓の高さの〇分の1程度の知識では、最適な長さに設計できません建物の向きや、最適な季節まで日影になるように軒の長さを決定してやる必要があるのです。

迷いヒヨコ

建物によって、最適な庇の長さが違うのですね。ここはプロの人にお任せですね。

東西面に入る日射の防ぎ方

夏場の対策として東西面の遮熱が重要なのでした。

遮熱の対策として一番効果があるのは、窓面を小さくすることです。(そもそも壁からは殆ど入ってこない)
なので、東西面の窓の大きさは極力小さくしておくことが重要です。

それでも東西面からの直射日光はまだまだ影響が出てきます。
小さくした窓面からも日射を防ぐにはどうしたら良いでしょうか?

一番効果的な方法は、窓の外面で日射を防ぐことです。

下図のように、一旦窓の内側に入ってしまった熱はなかなか外に出せません。 なので、元々外から日射が直接入らないように工夫してやる必要があるのです。

日射の出入りに配慮したベストな間取りとは?

ここまでの話で、日射のコントロールが簡単なのは、東西面より南面です。
ですから、簡単なのは南側から多くの日射を取り入れると良いのです。
南面から多くの日射を取り入れるにはどうしたら良いでしょうか?

単純は話で、一番暖めたい場所であるLDを南側に大きくとれば良いのです。
東西方向に長くLDをとり、窓開口を大きくとるのです。
実はこれ、マンションに多い間取りなのです。

更に工夫してやることで、もっと沢山の日射を取得してやることも可能です。

ただし、ここで注意しなければならないのがオーバーヒートです。開口を沢山設ければそれだけ暖かくすることが出来ます。

しかし、あまり多く設置しすぎると熱の取得が大きくなりすぎて冬でも暑いと言った、状況が出来上がってしまうのです。パッシブデザインではここに大きなデメリットがあり、上手く設計しないと生活が不便になってしまうのです。

これは、高断熱住宅であればあるほどその傾向が強まります。 なので、単純に間取りだけで解決できる話では無く、断熱性能とのバランスの取れた窓開口の設計が必要となるのです。

迷いヒヨコ

ここでもバランスが大切なのですね。断熱性能に最適な開口サイズがあるのだとしたら、これは素人では難しいですね。

パッシブデザインの有名な設計事務所や大阪における工務店

最後にパッシブデザインを得意とする大阪の設計事務所をご案内します。

これは、何を隠そうくまさん自身がそのパッシブデザインの有力者なのです。
(大学ではここを専門的に教えています。)

また、くまさんが普段から依頼している工務店さんであれば、設計自体はまだまだですが、パッシブデザインを実現するだけの施工力は持っています。 バランスの取れた最高のパッシブデザインを手に入れたい場合は、是非ともくまさんに直接相談して下さい。

ここでは触れていない、更に詳しい話を聞いて貰おうと思います!

森のくまさん

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参考 過去の住宅実例Galleryhappy new life
くまさんがパッシブデザインした住宅

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