HEMSとは、Home Energy Management Servise(ホーム・エネルギー・マネジメント・サービス)の略で、省エネルギーを実現するために考案されたシステムです。簡単には大きく2種類の機能があります。
- 家庭内で使用・発電・貯められた電力(ガス、水道)の表示
- インターネット等の回線を通じた、遠隔による家庭内の家電製品の制御
①は、「エネルギーの見える化」と呼ばれていて、テレビやスマホに電力の使用、発電、蓄電の状況が表示されます。ガスや水道の表示は別途表示するための機器を取り付けることで表示が可能となります。
②は、現時点では制御できないか、制御できるものが限られています。しかし、将来的には家電製品などの最適な稼働を自動制御することが出来るように検討されています。
平成24年に発表された内閣官房 国家戦略室「グリーン政策大綱」によると、2030年までに全ての住まいにHEMSを設置することが目指されています。
HEMS設置の現在のメリット
電気やガスなどの家庭で使う設備機器をインターネットなどの回線を利用してネットワークに接続して、スマホやパソコンなどから『監視』や『遠隔操作』を行えることが最大のメリットです。
ただし、現時点で監視は分電盤に接続された回路単位となっていて、遠隔操作は一部のメーカーのエアコンなどに限られます。
太陽光発電などによる発電量はこの分電盤を通して、表示されます。蓄電池に対する蓄電量も同様です。

HEMSを設置するための費用は?
HEMSは比較的容易で、分電盤にHEMS専用の機器を追加で取り付けるだけです。価格としては8万~20万円程度であり、経済産業省や地方自治体などが主導となり導入の支援となる補助金が貰える場合があります。
また、モニターは専用のモニターを取り付けることも可能ですが、スマホやテレビ、パソコンとインターネットやWIFIを介して接続することも出来ます。
HEMSによる自動制御の将来像
HEMSは将来的には、自動で屋内で消費される電力を制御して、最適なエネルギー消費を実現することを目標としています。
これには、分電盤から収集されたデータをスマートメーターを介して、クラウドサーバーに収集する方法が検討されています。この時に利用されるネットワークはデータの漏洩を防ぐ目的で、通常のインターネットではなく、エコーネットライト(ECHONET Lite) と言われる規格の通信方法をとることが検討されています。
これにより、収取された情報がクラウド上で分析され、屋内のエネルギー消費を最適に自動制御できるような未来像が描かれています。これをデマンドレスポンスと言い、発電所の発電状況によって消費する電力を抑制したりして全体の電力不足の解消にも役立つとされています。

また、更にその先にはP2P(ピアツーピア)と呼ばれる、太陽光発電などの発電によって余った電力を、個人間で取引するためのシステムとして利用される可能性もあります。このP2Pは、ドイツの一部都市では既に実現されており、全て自動で個人間の電力売買が行われています。電力が不足する場所に瞬時で売買価格を決めて、売り買いすることが実用化されています。
近い将来には、勝手に省エネしながら部屋の温度調整ができるような暮らしが実現するかもしれませんが、HEMSの普及にはまだまだ課題が多いのも現実としてあります。